ランバ・ラル
4000HIT記念 Q太郎さんリクエスト
「蒼い巨星」ことジオン公国宇宙軍所属ランバ・ラル大尉のご紹介です。このラル大尉はかなり人気の高いキャラです。ガンダムにおけるオヤジキャラの伝統はこの人から始まったのではないでしょうか?
でっぷりと出たお腹、たくわえられたお髭、中年を感じさせぬ鋭い眼光、オヤジの貫禄がジオンの蒼い軍服を着て歩いているようなもんです。カコイイオヤジの横にはカコイイ女性がいるものですが、ラル大尉にも例に違わずハモンさんという非常に線が細くて、しかし豪気な女性がついてます。
ラル大尉を司令官としたランバ・ラル隊は、ホワイトベースとの戦いによって戦死したガルマ・ザビ大佐の仇討ち部隊として、ドズル・ザビ中将の命を受けて地球に降下してきました。
これが腑に落ちないのですが、いくら「蒼い巨星」としてその名を轟かせているラル大尉とその部下達とはいえ、部隊の構成が、ザンジバル、その他MSがグフ、ザクが2、3機、これではちと戦力不足ではないでしょうか。相手は単艦とはいえ、あの「赤い彗星」の執拗な追撃をかわし、あまつさえ、ガルマ・ザビ大佐の指揮する大部隊が大敗を喫しているわけですから、ドズル中将ももう少しラル隊の装備を奮発してあげればよかったのに。まぁ、それほどジオンの戦力が限られたものになっていたという実例なのでしょうね。
さて、与えられた装備が大して強力ではなくても、ラル大尉の一行は果敢にホワイトベースに戦いを挑みます。初めてガンダムと交戦し、ザクとは一味違うグフの性能にしょんべんちびるアムロに、名言「ザクとは違うのだよ、ザクとは!」と、叫んでくれます。
風格が違いますね、風格が。いちびってガンダム持ち逃げするような小僧(アムロ)
とは戦士の貫禄が違います。
ラル大尉は、偶然にも砂漠の町で、ガンダムを持ち逃げした直後のアムロと出会います。ハモンさんに気に入られ食事をご馳走をされて、いったん断りを入れたアムロに対し「小僧、いい目をしている。それにしてもいい度胸だ」と、ふてくされモードのアムロを大絶賛。
せっかくのハモンさんの好意を「恵んでもらう理由が無い」と一度断ってしまった生意気なガキに、何と広い心で接するのか!ホントなら、あの時点でアムロはタコ殴りにされて「機動戦士ガンダム最終回・アムロ荒野にタコ殴り!」で番組が終了していてもおかしくない!
そんなこんなでアムロと運命的な出会いをしたラル隊長、直後にホワイトベースに強襲を掛けた際に、戻ってきたガンダム&アムロペアに敗北してしまいます。それがあの有名なグフとガンダムが斬りあうシーンです。今で言うと「御家人斬九郎」みたいな殺陣がロボットアニメで見られます。カッチョイイですよ。
「見事だな!しかし小僧、自分の力で勝ったのではないぞ。そのモビルスーツの性能のおかげだということを忘れるな!」
これ、これですよ!このセリフ。もしかしてこれが言いたいがためにアムロに負けたんじゃないのかと(笑)。負け惜しみにも聞こえなくはないですが、この時点でアムロはまだ「小僧」、「いい目をした小僧」なんですね、ラル隊長からすればまだ「戦士」じゃない。
ラル隊長は明確な意思をもって戦場に赴いているのに対して、アムロはその場の状況に流されて、ただ戦っている。勝てたとしても、やっぱり「モビルスーツの性能のおかげ」以上の勝利には成り得ていません。その点、ランバ・ラルの言葉は的を得ているかと思います。
さて、ランバ・ラル隊VSホワイトベース隊注目の最終ラウンド。すでにグフを失っている隊長は、部下達を引き連れて果敢に白兵戦を挑みます。
もともと、ラル隊は白兵ゲリラ戦で鳴らした部隊なのでMSが無くたってそんなものへっちゃらです。まんまとホワイトベースに乗り込み、乗員が子供ばかりなのに驚きつつもアムロやブライト達を窮地に追込みます。
ところが、ラル隊長にとっては驚愕の事実、あのアルテイシア・ソム・ダイクン様がホワイトベースに乗っていらっしゃるではありませんか!
ランバ・ラルの父ジンバ・ラルはダイクン派の中心人物だった人で、政権がザビ家に奪われて後は、幼かったシャアことキャスバル・レム・ダイクンとその妹セイラ・マスことアルテイシアを引き取って育てていたのです。ザビ家とダイクン派の話や、ダイクン派の父を持つラル隊長がなぜザビ家のジオンに軍人として参画しているのかなど、少しややこしいので割愛しますが、ジオンにも複雑な事情があるようですね。
兎に角、当然、ランバ・ラルと彼らとは面識があったわけで、アルテイシアが連邦軍の艦で戦闘を行っているなどということは予想だにしなかった事実です。
面食らったラル隊長は驚きを隠せず、生じた一瞬のスキが災いして致命傷となる銃弾を受けてしまいます。嗚呼、隊長!
「すまぬ、ハモン。ランバラル、戦いの中で戦いを忘れた・・・」
ランバ・ラル大尉はこの通信の後、爆弾を小脇に抱えてガンダムの手のひらで爆死します。その様子をガンダムのコクピットにて目撃したアムロ、小僧の目には戦士としてしか生きられない不器用なラル大尉の生き様はどのように映ったのでしょうか。
アムロは、ラル大尉との戦いを前に、ぽつりとこういう言葉を残しています。
「ぼくは、あの人に勝ちたい」
「勝ちたい」、やっと少年活劇風なセリフが、アムロから出た瞬間です。それまで、うじうじもぞもぞしていたアムロですが、ラル大尉との戦いの中で、「ランバ・ラル」という戦士に触れたことで大きく成長しました。それが、この自発的な戦いの意思の言葉として出てきたのです。アムロは、別に軍人としてラル大尉を見習いたいわけではなくて、「戦士」としてランバ・ラルを尊敬していたのでしょうね。
この後、主人公アムロの戦いへの姿勢は劇的な変化をみることができます。非常におもしろい展開ですね、敵役が主人公を成長させてしまうのですから。
こうして、ラル大尉はアムロを成長させた偉大な人物として、ガンダムの歴史に名を残す事となりました。企業のリストラで職を失ったり、部下や社員を守るべく奮闘する中年オヤジはたくさんいます。若いもんのパワーや能力は古い時代には無かったものとして珍重され、能力がすべてという風潮が次第に広がってきていますが、若い能力をさらに伸ばす器量と老獪さ(ラル隊長はそこまで歳を取ってませんが)を持つオヤジの存在はより貴重なものではないでしょうか。
ポコっと飛び出たおなかも、バカにしてはいけませんよ。
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