ライヴ・レポート
◆川下直広トリオ◆
川下直広(tenor sax)、不破大輔(bass)、岡村太(drums)
2006年7月22日(土) 神戸・三ノ宮「BIG APPLE」 開演19:30 料金2800円(予約)
3200円(当日) +ドリンク(お代わりが望ましいとのこと)
ネットの繋がりというのは有難いと思っています。前回、坂田明さんのライヴで初めてお会いしたイシダさんから、
今回ライヴのお誘いの声を掛けて頂きました。。また、5月に東京でお会いした3100男さんも神戸に来られるというので、
それではぜひ! という事で、あまり(というかほとんど)馴染みのない神戸に行きました。
川下さんという人については、私は全く知らず、不破さんは「渋さ知らズ」というユニットで活躍されているそうですが
その活動内容もほとんど知識になく、でもまあ行ったら分かるだろう! とノンキに構えていました。
なにぶん方向音痴なので、迷子にならないように地図も用意、午後四時ごろ、早めに家を出ました。
大阪からJR快速に乗り、午後5時20分ごろ、三ノ宮に到着。
神戸といえども、お洒落な雰囲気ではなく、雑多でどこか鉄火な雰囲気が漂う高架下の商店街を歩き
「大阪でもこういう感じの所(布施・・・)があるなあ」と思いつつ、まだ時間があるので
店への目印「トーア・ロード」近くのビルにある、「りずむぼっくす」という中古CD店で幾つか買い物。
6時過ぎになり、路線と直角に、北の方へのびている「トーア・ロード」を歩き出しました。
予想以上の坂道で、早くも汗が噴出。まあ神戸だし、このトーア・ロードをずっと上がっていけば着ける、
とお店のサイトでも書かれていたので、ふと安心してしまったのが間違いでした。
時間的にたぶん小腹が減るだろうと思い、上り坂の途中でコンビニに寄り、おにぎりを購入。
コンビニを出て、そのまま歩いていくと、どうも持ってきた地図と違うような・・・
しばらくして、道にある地図で現在地を確認すると、トーア・ロードとは直角に交差した全く別の道を歩いていた事に気付きました。
またやってしまった。おかしいなあ、ずっと一直線に歩いてきたはずなのに。
慌てて引き返し、ようやく「トーア・ロード」という小さな表示(三ノ宮駅近くでは大きく表示されていたのに・・・)を発見、
「“TOR ROAD”のTORってどういう意味や。キラー・トーア・カマタのトーアか」
などと思っている内に、前方に赤いリンゴの看板が見えた。助かった・・・
ビルの地下にある会場。階段を下りると、ドアが一つ。
恐る恐る開けて入ると、丸い椅子が並べられた店内。と、左手のソファに、
ソニー・ボーイ・ウィリアムソン 『Down and Out Blues』 のジャケットみたいに
ヒゲもじゃのオッちゃんがダラ〜ッと寝転んでいる。お店の人かな?
と思っていると、「いらっしゃい」と右手から声がして、マスターらしき人がメニューを手に出てこられました。
「ビール下さい」
ヒゲのオッちゃん以外、お客さんは未だ誰も来ていないので、不安になりつつも、
どこに座ろうかと暫らくウロウロ、壁際の席に落ち着きました。
とにかくノドが渇いたので、ビールが美味い!
暫らくすると、3100男さんと太陽神さんが入って来られました。
「どうも、お久しぶりです!」
一番前に座ったら? と3100男さんの勧めで、壁際から最前列の椅子に移動。足元に、ウッドベースがドーンと。
その後、イシダさんが来られ、またネットで何度か名前を拝見していたsmokey
gorobinsonさんとも初めてお会いし、挨拶。
歓談しつつも、あのヒゲのオッちゃんが気になっていたので質問、
「あの寝てる人、誰ですか?」
「あれ、不破さんです」
「エッ!?」
すぐ横のカウンター席に座っている、禿頭にヒゲ、眼鏡を掛けたオッちゃんが、川下さんだと知ってまたビックリ。
ドラムの岡村さんは、顔は若く見えるが、伸ばしたアゴヒゲが白髪で、ジッと見てしまう。
開演時間は7時半のはずでしたが、お客さんがようやく揃った(?)8時ごろに、演奏が始まりました。
おもむろにテナーサックスを吹き始めた川下さん。
煙たい、ブルースの匂いが濃いフレーズが出てきたと思うと、不破さん、岡村さんが加わって一気にフリーブローイングに!
いつの間にか、川下さんのテナーの「朝顔」が、私の目の前に。前回の坂田さんと同じ・・・
その朝顔からドバーッ! と噴き出される圧倒的な音(シャウト)を、マトモに顔に受ける!
タマラン。
アーチー・シェップを連想させるソウルフルなブロウ、しかしそれ以上に、私の目の前でグアーッと揺れまくる川下さんの姿にクラクラ。
ウ〜ッと朝顔を見つめていると、管の中に僅かに光が差し込んで、本当にその管が川下さんのノドのように思えてきました。
いつまで続くんだろうか? と心配になるほどブリブリブリッ! と吹きまくった川下さんですが、
後ろを振り返って合図を送り、1曲目が終了。拍手。しかし、またも自分の拍手の音が聞こえない!
恐るべきマッシヴな音の塊を受けた衝撃が、まだ鼓膜に残り、その余波が後頭部に溜まってモヤモヤする。
ノドがカラカラだったので、ウーロン茶を一口飲もうとしたら、MCもなく、すぐに次の曲に。
今度は、ガトー・バルビエリを思わせる曲想とブロウに、「あ〜、これはイイ! こういうの大好き!!」と感激。
グーッと高みに上っていく「波」が、何度も何度も押し寄せて、その度に腹にグッと力が入る。
不破さんと岡村さんが叩き出すビート(ワルツだったか?)に押され、グイッと伸び上がるように、ブロウをかます川下さん。
「オラオラオラ!」と、どやしつけられるようで、こちらは思わず身を仰け反らせる。
ラテン調のせいか、ところどころで腰が揺れるアクションもエッチでいい(^^)
目の前の朝顔、その上の、川下さんのクアーッ! とした形相、交互に見入りながら、
いつの間にか全体のリズムに合わせて、体が動く。やっぱり、ライヴってこういう点がいいなあ。
腹に力が入りまくり、ノドが引き攣り、演奏が終わると、虚脱してウーロン茶を一口。と、またすぐに演奏開始(早い・・・)
印象的なテーマ(ファラオ・サンダースの曲だったそうです)の後、不破さんと岡村さんが猛烈な4ビート。
今これを書いている時点で、川下さんのブロウは「本当に圧倒的」としか、言いようがないのですが、
岡村さんの、凄まじい両手首の動きに瞠目。特に右手、手首だけが腕から独立しているかのよう。
で、ソロになるともうヤケクソのように、真っ赤な顔で叩くというより、ドつきまくる!
痛快。
そして、川下さんの朝顔。目の前から噴き出る音に、思わず「クソー、負けるか!」とばかり、(心の中では)ファイティング・ポーズ。
しかし、ボコボコにパンチを食らいまくって、あえなくKO。演奏が終わり、グッタリ。
川下さんが、メンバーを紹介した後、休憩。
ボーッと座ったまま、頭を抱えたり、耳を押さえたりしている私に、
「後ろに席替わる?」と、皆さんが心配して下さりましたが、結局そのまま最前列の席に。
しばらくして、川下さんがハーモニカを取って、吹き始めました。
いかにも港町、神戸に似合いそうな、寂しげなハーモニカの音色は、虚脱状態の私にスーッと入ってきて心地いい・・・
やがてテナーに持ち替えた川下さん。2st セットは、私の目の前でなく、もう少し向こう(ステージ真ん中辺り)に立ち位置を変えておられましたが、
「朝顔の向き」は、私の方に向いているので必然、轟音はこちらを直撃(^^;)
哀愁のあるメロディを、嵐のようにグワッと膨らませる川下さん、その顔を見上げると、汗が(スキンヘッドを)滴り、光っている。
思わず「ジャズは汗と熱気だ」という言葉が頭に浮かびました。床に落ちた汗の跡。
続く曲は、変拍子(?)を間に挟んで、4ビートをバックに川下さんが吹きまくったのですが、
瞬間、ジョー・ヘンダーソンを連想しました(1985年のヴィレッジ・バンガード・ライヴ)。
ジョー・ヘンダーソンを凶暴にしたような川下さんの突進に、思わず身を乗り出しそうになり、興奮。
4ビートの合間の、不破さん(座って弾いておられました)のベースもファンキーの一言。
そのファンキーなビートが挟まっている事で、「やっぱり4ビートって気持ち良いなあ!」と思わされることしきりでした。
3曲目は、どういう曲だったか忘れてしまったのですが(すいません)、
クライマックスで川下さんが独奏。全身を揺らし、サックスに捻じ込むように左腕をガッと動かし、
渾身のカデンツアを展開している後ろで、気持良さそ〜に煙草をプカ〜ッと一服する、不破さんと岡村さんがとても印象的でした。
演奏が終わり、拍手。と、間髪を入れず、岡村さんの掛け声が上がり、
猛スピードのR&B調の、アナーキー極まりない演奏に突入したので唖然。
(どこかで聴いた事あるなあ、と思っていたら、アルバート・アイラーが『ニュー・グラス』でやっていた曲だそうです)
突き抜けるようなヤケクソっぷりで、バコバコ叩きまくる岡村さんを見ているだけで楽しい!
狂熱の演奏が終了、アンコールの手拍子に、「まだやるの?」といった感じで笑うお三方(^^)
微妙な間(笑)の後、川下さんが
「・・・え〜、どうもお疲れさまでした」
しかし手拍子は止まず、アンコールの曲に。静かで、しかし感情が湧き上がるような演奏に目を閉じて聴き入る。
(これはチリのヴィクトル・ハラという人が作った、「平和に生きる権利」という歌で、1973年アジェンデ大統領を殺害した軍事クーデター時に、
ハラ氏も虐殺された、ということを後で3100男さんに教えて頂きました)
ライヴが終わり・・・メンバーの方がお客さん達といろいろ歓談されています。
私はしばらく座ったままでいると、斜め向いの椅子に川下さんが座って、煙草を一服。
せっかく、ミュージシャンがすぐ横におられるんだから、何か言わないと・・・とソワソワ。
私「あの〜・・・」
川下さん「はい?」
私「あの、演奏曲目は全曲オリジナルですか」
川下さん「え、何?」(私のコモリ声は聞こえにくい)
私「あの、オリジナルですか、演奏曲目?」
川下さん「いえ、オリジナルは・・・1、2曲ぐらいですね」
私「あ、そうですか・・・」
・・・
私「・・・あの、セカンドセットの、2曲目」
川下さん「はい」
私「あの、あれはジョー・ヘンダーソンの曲ですか」
川下さん「2曲目・・・いや、あれはオリジナルです」(^^;)
要領を得ない私の質問に、丁寧に答えて下さった川下さん、
風貌は一見コワモテ? どこか「手相占い」の衣装が似合いそうな感じでしたが、ジェントルな方でホッとしました。
カウンターに置かれている、川下さんのCDを購入。サインして頂きました。
(マスターに代金を渡そうとしたら、「あ、直接(本人に)渡して下さい」と言われたのでビックリ)
ライヴの余韻に浸りながら、神戸の坂道を下り、神戸に来るミュージシャンが皆来るという中華料理屋さんに連れて行ってもらいました。
不思議な髪型で、何となくオカマっぽい店員さんが気になりましたが、水餃子を始め、美味しい料理でした。
皆さんと、色々な話題で歓談。私が「昭和52年生まれ」だと言うと、非常に驚かれました(なぜ・・・^^;)
お店を出たのが午後11時半頃・・・これは終電に間に合うか微妙な時間、
三ノ宮駅に着くと、大阪への快速は11時57分発! ・・・
0時20分頃、大阪着。イシダさんと早足で環状線にホームへ上がると、「天王寺行き」最終。
これはもう仕方ない、ということで天王寺で降り、イシダさんとお別れした後、
タクシーに乗って最寄り駅まで(速い速い!)。午前1時過ぎに帰宅しました。
寝ようと思っても、なかなか寝付けない。爆音の衝撃波(?)が後頭部に溜まり、それに目ン玉がジンジンする。
これは、目の前で壮絶に揺れまくる川下さんの姿と音に、思わず目に力を入れていた為だと思います。
「かぶりつきは体に悪い」
ことは、坂田さんのライヴでも何となく実感しましたが、今回のライヴでも、そうかな・・・と思いました。
でも、あの全体の音が炸裂して、ドーンと真正面からブチ当てられ、吹っ飛ばされそうになる瞬間、やっぱりタマラナイです。(2006・7・23)
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