| No.20 | −2003.1.15日号− |
| 今回は、不妊治療におい て最も問題となっている「多胎妊娠」について取り上げてみました。 |
| 多胎妊娠の推移 |
| 最近50年間で見た場合、1950〜1985年ごろまででは出産1000に対して6〜7の割合で双胎(双子)であったのが、1990年代後半から本格的に体外受精胚移植が開始されると1000に対して10、つまり全体の1%を占めるようになりました。1996年に日本産婦人科学会が、体外受精の移植する胚の数を最大3個までとしたことで(当クリニックでは2個移植を原則としています)、品胎(3つ子)の数は減 りましたが、未だ横ばい状態で100万の出産に対して260〜280の割合で品胎以上の出産があります。 また、品胎となった場合の妊娠が、自然妊娠なのかそれとも何らかの治療を行ったのかを見たところ、全体の24.5%が排卵誘発剤を使用しての自然妊娠、71.2%が体外受精などの高度生殖医療による妊娠で、まったくの自然妊娠による3つ子は全体のたった3.8%でありました。 |
| 多胎妊娠における問題点 |
| 多胎妊娠では単胎と比較し、流産や早産の可能性が高くなります。母胎合併症として、貧血が起こりやすくなったり、*妊娠中毒症になったりしますし、お産時には陣痛が弱かったり、出血量が多くなったりします。そして生まれてくる赤ちゃんも形態異常や低出生体重による死亡率が、胎児数の増加に比例して発生率が上昇することが分かっています。 *妊娠中毒症 特に20週以降に高血圧、蛋白尿、むくみなどが出現する病気です。原因は不明とされていますが、妊娠中に末梢の血管が収縮して高血圧になり、これが血管中の循環血液量を減少させて血液を濃縮し粘度を高め、その結果子宮や腎臓への血液量が減り、子宮内の胎盤が分娩前にはがれて胎児が危険になったり、腎臓機能が低下して血液中に蛋白質を留められず、尿中に蛋白質が出てしまったり(蛋白尿)します。血管内から蛋白質が失われると、血管内の水も血管外に出てしまうので、これがむくみとなって現れます。妊娠中毒症は悪化すれば早産・死産の原因にもなるばかりか、母体の命にも関わるので軽視ができません。 また、超音波検査によって、流・早産の危険性がないか頻繁にチェックする必要があり、予防的に早めに入院となることがあります。特に、品胎の場合には、ほとんどの場合妊娠判明後から出産までの間、ずっと入院しなければならないことになります。また、早産予防のために、子宮の出口を妊娠初期にひものようなものでしばっておく手術(子宮頚管縫縮術)を行う必要も高くなりますし、出産時にはほとんどの場合帝王切開となります。 |
| 体外受精における多胎妊娠をいかにして予防するか |
| 体外受精で多胎妊娠が発生しやすいのは、妊娠率を向上させるために3個以上の胚を移植するのが最大の原因と考えられます。移植を行う胚数と妊娠率の関係は、IVF大阪クリニックの平成13年のデータによると、1個移植で17.3%、2個移植で39.3%、3個移植で36.8%と、2個移植と3個移植では妊娠率はほぼ同率でありました。また、多胎となった率は、2個移植の場合17.6%、3個移植の場合23.1%で、やはり3個移植の方が多胎の率は高くなることが分かりました。そのことより、移植胚数は原則的に2個が適していると考えられ、IVF大阪クリニックでもほぼ全例で2個移植を行っており、ここのところ品胎は発生していません。 近年では、培養液の開発が進み胚を5日目まで培養し胚盤胞という状態で移植を行う、胚盤胞移植により良好な成績が報告されています。この方法は単に妊娠率を上げるためだけが目的ではなく、体外での培養期間を延長することにより、より着床の能力が高いと考えられる胚を選別することができ、多胎妊娠、特に品胎を減らすことが出来ます。言い換えると、移植胚数が1つであってもそれが着床の潜在能力を十分に持っておれば、移植する胚は1つ(悪くとも2つ)でよいことになり、多胎妊娠を減らすことが出来るわけです。しかし、まだ1個移植と2個移植では、妊娠率に差があることから、今後は1個のみの移植で現状の4割程度の妊娠率が得られるようになるための研究を進 めています。こうしたことを、多くの施設で実施できるようになれば、体外受精胚移植における「多胎妊娠」という問題点が改善されるのではと思います。 【参考文献】 青野 敏博 「日本における多胎妊娠の動向」 臨床婦人科産科雑誌 Vol.56 No.6 |
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| No.21 | −2003.2.8日号− |
| 今回は、不妊治療でも用いられる「漢方療法」について取り上げてみました。 |
| はじめに |
| 近年はART(生殖補助治療)が急速に進歩し、子宮内膜症、原因不明の長期不妊症、不育症の治療、そして男性不妊症にとっては、体外受精胚移植の技術により大きな恩恵をもたらしました。体外受精胚移植のみならず、精巣内精子による顕微授精や、胚や精子の凍結・融解技術もかなり進歩してきました。施設によっては、原因不明の不妊症患者に対し、早期にARTが実施されるところもありますが、ARTはすべての不妊症に対応できるものではなく、このような原因不明の患者に対しては手探りで治療をしているのが現状です。そんな中、原因不明や難治性の不妊症に対し、非ART治療として漢方療法が注目をあびています。 |
| なぜ、漢方療法なのか? |
| ARTでは前号のメルマガでも取り上げた多胎妊娠の問題、そして卵巣刺激による重篤な副作用に十分注意を払わなくてはいけません。さらに現在クローン人間が問題になっているように、生殖医療が進化すれば進化するほど、解決しなければならない問題が多く発生してきます。 従来より、漢方医学では不妊症の原因は五臓六腑(五臓と、大腸・小腸・胆・胃・三焦・膀胱(ぼうこう)の六腑のこと。簡単に言うと内臓)のバランスが崩れ、そして内分泌(ホルモン)のバランスも崩れることが原因となっていると言われています。特に異常もなく検査で問題がなくても、長期不妊となり繰り返し体外受精などのARTを行っても妊娠に至らない場合は、漢方医学的な診察で*「気血水」のバランスが整っていないということが判明することがあります。 *「気血水」:古人が想定した身体の働きを保持する三要素。(現代医学の立場からすると、何を指しているのか分かりにくいところもある) ○気の異常・・・頭痛、めまい、のぼせ、顔面紅潮などの「気の上衝」、抑うつ気分、不安感、呼吸困難感などの「気鬱」、疲労しやすい、倦怠 感、意欲低下などの「気虚」があります。 ○血の異常・・・舌や唇が紫色になったり、鬱血したりする、月経異常、下肢の静脈瘤などの「お血(おけつ)」(血が固まっている)、 貧血、 皮膚の栄養状態不良などの「血虚」があります。 ○水の異常・・・顔や手足がむくむ、鼻水や痰が多い、他尿などの「水毒」があります。 ◇◇ 実際の漢方治療 ◇◇ 実際の漢方治療としては西洋薬の性機能への刺激と共に、漢方薬による「気血水」あるいは五臓六腑の調整により、個体が持つ性機能調整力を回復させ、そしてそれを妊娠する能力の回復へとつなげます。つまり、機能性不妊症と呼ばれる排卵障害や黄体機能不全のなどのホルモンバランスの乱れによる不妊症、そして原因不明の不妊症などに対する治療法の選択肢の一つとして漢方療法が有力な手段となり得ると言えるわけです。 ◇◇ 漢方理論による不妊症 ◇◇ 人の生殖機能は原則的に五臓六腑のうち「腎」機能に最も関与していると言われています。もともと腎臓の機能が弱っている場合もありますが、ダイエットや日常に起こりうることによるストレスなども原因になるとされています。このような五臓六腑・気血水の異常をそのままにしてARTを試みてもその臨床成績の改善は期待できず、原因不明の不妊症として無駄に時間を過ごしてしまうことになります。このように難 治性不妊症や原因不明の不妊症では西洋医学的な治療の限界から、比較的早期にARTを行うのが現状となっていますが、非ART療法としてはこれらの理由により漢方療法が第一に推奨される治療法であると考えられています。 |
| どういった漢方薬が使われるか |
| 不妊症患者には「虚症(水太り、または痩せ型で、腹部は柔らかく胃腸は普通化弱い、疲れやすい、寒がり、動作が緩慢で、声が弱々しいなどの特徴)」の方が多く、「お血(おけつ)」の頻度が高いと言われています。研究で、妊娠成功例では「当帰芍薬散(とうきしゃくやくさん)」の処方例が最も多く、他に桂枝茯苓丸(けいしぶくりょうがん)、加味逍遙散(かみしょうようさん)などもよく処方されていることが分かっています。不妊症のなかでもホルモン分泌が不足している例や、さらに黄体機能不全症、多嚢胞性卵巣症候群、頚管粘液不全などの内分泌的な改善をはかる目的では「温経湯(うんけいとう)」が最もよく処方されています。 漢方薬は体質にあった物を選択する必要があり、体にあったものでないと十分な効果が期待できません。漢方薬を決定するためには、患者さんの訴えが非常に重要で、漢方治療を希望する場合には、自覚していることは何でも話し医師に症状を伝える必要があります。 |
| 漢方治療による妊娠例 |
| 最近の文献で報告された、漢方治療による妊娠率の一覧です。 桂枝茯苓丸 37.5%( 60/160) 当帰芍薬散 36.9%(116/314) 加味逍遙散 35.2%(190/540) 温 経 湯 30.4%( 86/283) 芍薬甘草湯 24.8%( 26/105) このよく用いられる5つの漢方薬のうち、芍薬甘草湯を除く漢方薬はすべて駆お血(血液の固まりを除き、血流を改善させる)作用がある漢方薬です。不妊症患者にお血の頻度が高いと言われるのはこのことからもよくお分かり頂けると思います。 |
| 今後の漢方薬の役割 |
| 漢方医学は、疾患のとらえ方が根本的に異なるため、不妊症の患者に対し別の面から異常点を見いだすことが出来ます。不妊症の患者さんに対しては、西洋医学的に認識される異常は西洋薬、漢方医学的診察による異常は漢方薬を用いながら、積極的に両療法を合わせて治療していくことが、今後の不妊症治療に有効であると考えられます。 【参考文献】 後山 尚久 「難治性不妊に対する漢方療法」 産婦人科治療 Vol.85 No.5 |
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| No.22 | −2003.4.16日号− |
| 今回は、すでにヨーロッパやアメリカなど世界23カ国で発売され実際に使用されている薬で、日本では現在治験(臨床試験)を行っている段階の不妊治療で用いる新薬「Gn-RH拮抗薬(antagonist:アンタゴニスト)」について取り上げてみました。さらに、治験とはどういったものかということにも簡単に触れようと思います。 〜生殖補助医療におけるクローン技術の応用の可能性〜 |
| Gn-RH拮抗薬とは? |
| 体外受精とは奥様から卵子を取り出し旦那様の精子と受精させ、そして奥様の子宮内に再び戻してあげる一連の操作を言います。その体外受精においては、卵子をできるだけたくさん取り出すために、性腺刺激ホルモンを月経周期がはじまる頃から毎日注射し、一度にたくさんの卵胞(この卵胞内で卵子が発育します)を育てます。たくさんの卵胞が発育すると脳下垂体と呼ばれるところから「排卵して下さい!」という命令を出すLH(黄体化ホルモン)が分泌され、排卵が引き起こってしまいます。卵子を取り出す前に排卵してしまっては、卵子が得られません。この「排卵して下さい」という脳下垂体の命令を抑制する(黄体化ホルモンを抑える)のがこの薬の作用です。 |
| 何が新しいのか? |
| 「あれっ?今でも排卵を抑制する薬は発売されているはず・・」と思われた方もおられると思います。現在ではGn-RH作動薬と呼ばれるスプレキュア(イトレリン、ブセレキュア、フセット)やナサニールなどの点鼻薬を用い、排卵が引き起こるのを抑制していました。しかし、この点鼻薬は卵子を取り出す前の月経周期の黄体期中期から、卵子を取り出すまでずっと毎日数回(当クリニックでは1日4回)鼻にスプレーしなければならず、非常に面倒でした。ところが、このGn-RH拮抗薬は投与期間が短く(5日間前後)、しかも1日1回の注射のみで済みます。 |
| 他にどういった利点があるのか? |
| 現在用いられているスプレキュアなどと比較し、ほてったりのぼせたりする症状も起こることがありません。さらに卵胞刺激に用いる注射の量も、スプレキュアの場合よりも少量で済むことも分かっており、経済的なメリットもあります。さらに、卵の発育に悪影響を及ぼすLH(黄体化ホルモン)を抑制するため、スプレキュア等に比べ質の良い卵が発育する可能性が高くなると期待されています。 |
| 有効性や安全性は? |
| 現在、主に使われているスプレキュアと比較試験が海外で行われましたが、採卵数や良好胚獲得率、着床率、妊娠率、流産率に統計学的な有意差は見られていません。しかし、先程も書きましたように、効果は同じでも治療における負担が減るという点を考えると、将来的にGnRH拮抗薬の使用はスプレキュアなどのGnRH作動薬を上回るのではと言われています。 安全性については、注射の投与部位に多少の痛みやかゆみ、赤く腫れ上がる症状が認められる症例もありましたが、これらの症状はいずれも軽く処置することなしに1日以内でほとんどの場合回復しています。 |
| 治験とは |
| これまでに新しい数多くの薬がつくられ、多くの患者様の治療に役立っています。しかしこれらの薬が研究開発中の場合、薬が実際に治療薬として認められるためには実際に患者様に使って頂き、効果や安全性、また最適な投与量(用法・用量)を調査しなければなりません。この調査は臨床試験または治験と呼ばれ、治療に加えて研究または試験としての役割があります。また、海外での治験結果があるときには、日本人にその結果が当てはまるかどうか、橋渡しの調査をするブリッジング試験というものもあります。今回、当クリニックでも行われる予定のこのGn-RH拮抗薬の治験もこのブリッジング試験に当たります。 |
| 治験に関わる費用は? |
| 治験に参加して頂いても、負担する診療費用が通常の診療費用以上に増すことはなく、体外受精-胚移植にかかる費用等はすべて治験を依頼している製薬会社が負担をします。万が一、治験の実施中に健康障害が発生した場合にも、最善を尽くして治療を行い、その場合の費用も治験依頼者が負担を行います。 治験を希望され参加基準もクリアすると、治験を受けるにあたっての十分な説明を受けて頂きます。そしてご夫婦で相談して頂き、治験に参加するかを決めて頂きます。たとえ参加に同意されなくても何ら不利益を受けることはありません。このGn-RH拮抗薬の治験はどこの不妊治療施設でも行っているというわけではありませんが、 当クリニックでは今月より行う予定にしておりますので、興味を持たれた方はご相談下さい。 |
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| No23 | −2003.4.16日号− |
| 今回は、生殖補助医 療におけるクローン技術の応用の可能性について取り上げます。 |
| クローンとは? |
| クローンとは「同じ遺伝子を持つ個体や細胞の集合」を指す、生物学における用語
です。クローンの作り方は、受精卵を使うものと、*体細胞を使うものの2通りありま す。精子と卵子が受精してできた胚を分割させてそこから遺伝情報などが含まれる** 「核」と呼ばれる部分を抜き、それをあらかじめ核を取り除いた別の未受精卵の核と
して移植し、子宮に入れるという方法です。これは、***一卵性双生児の誕生の過程と よく似ています。 *体細胞・・生物体を構成している細胞のうち、生殖細胞以外の細胞の総称。 **核・・真核生物の細胞内にあり、核膜に包まれ、遺伝物質を内蔵する球状構造のも の。 ***一卵性双生児・・一個の受精卵から生じた双生児。遺伝因子が同一のため同性で、 顔つきなど諸形質が酷似。 クローン羊やクローン牛とは、お互いに全く同じ遺伝子組成を持った複数の羊や牛 を指します。1996年にイギリスで「ドリー」と名付けられたクローン羊が誕生し ました。「ドリー」の写真が新聞や雑誌などに大きく取り上げられたことは、皆さん の記憶に新しいと思います。このドリーの場合は、成長した羊の一部から体細胞を取 り出し、これをあらかじめ核を取り除いた未受精卵の核の代わりに移植し、クローン の細胞のもとになる細胞をつくり、成長した羊と同じ遺伝子を持つコピーを作ること ができたというわけです。 これまでにドリー以外に、牛やマウス、豚などで体細胞クローンに成功したという ニュースが報じられています。これを人間に応用することは可能であり、社会の厳し い批判にも関わらず、クローン人間が誕生するのは時間の問題だろうと言われていま す。諸外国ではクローン人間の産生は禁止されており、もちろん日本でもクローン技 術規制法により禁止されています。科学技術会議(内閣総理大臣の諮問機関)では、 生命倫理委員会の下にクローン小委員会を設置してクローン問題に関する議論を進め ています。また、文部省の学術審議会や厚生省の厚生科学審議会などにおいても活発 な議論が行なわれています。 |
| 生殖補助医療に応用可能なクローンの技術 |
| □ 精子・卵子(配偶子)レベルでのクローン □ ◆卵細胞質移植◆ 成熟卵子へ、別の若年者の提供卵細胞質を配偶者の精子と共に顕微授精をする方法 で、若年者の卵細胞質の一部のみを移植するので卵の部分的若返りをすることが出来 ます。 ◆核移植/置換◆ 若年者の提供未成熟卵から、卵細胞とよばれるものをあらかじめ除去しておき、そ のかわりに高齢不妊の卵細胞を移植する方法です。これをさらに体外培養し成熟卵に 成熟させ、顕微授精を行う方法です。高齢不妊卵の細胞質が全面的に若年者のものと 置き換わるので、卵の全面的若返り法と言うことが出来ます。部分的な若返り法より 有用性は遙かに高いと予想されています。 □ 胚レベルでのクローン □ ◆ヒト胚分割胚◆ 分割中の胚の割球を分けて、クローンの胚を作成するものです。 ◆ヒト胚核移植胚◆ 分割中の胚細胞核を若年の核を除いた卵に移植しクローン胚を作成するものです。 □ 体細胞レベルでのクローン □ ◆治療クローン◆ 何らかの原因で子宮を摘出して妊娠が不可能となった方でも、体細胞を用いたクロ ーン技術を用いることで、人工的に子宮を作り出すことが出来る可能性があります( 再生医療)。人工子宮の作成は将来、代理母出産に置き換わる可能性を秘めており、 諸外国ではこの種の基礎研究も開始されています。 ◆生殖クローン◆ 卵子そのものの形成が不可能な方でも、体細胞からクローン技術で卵子を作成する 事が出来る可能性があります。若年提供卵から卵細胞を除去し、そしてそのかわりに 体細胞を移植する方法です。 |
| クローン技術の適応と問題点 |
| 高齢不妊や反復体外受精不成功例では、細胞質の劣化が原因で染色体異常を来すこ とが多くなり、クローン胚治療(もちろん現実的には禁止されていますが)の適応と なります。 また、早発閉経や重症の造精機能障害は配偶子形成の適応となります。 問題点としては、提供卵の細胞質に異常があれば、その異常が出生児の異常につな がる可能性があります。 さらに、配偶子の形成や胚発育の過程で何らかの問題が起こ り、胎児の発育に異常が発生する可能性もあります。現在、まだこれらのことに関す る対策がないため、今後研究を進める必要があるとされています。 |
| まとめ |
| 高齢不妊、反復体外受精不成功例などの難治性(治療が難しい)不妊症治療に対し
、卵子の提供が認められるとクローン技術の活用により不妊症治療の幅が広がること
が期待できます。 しかし、クローン技術のヒトへの応用は人間の尊厳を損なう行為で あり簡単に許されることではありません。我々もそう考えています。旧科学技術庁も 、クローン技術の人への適応に関して倫理面での問題点について、人を意図的に作り 出すことが特定の優れた形質の人を生み出す品種改良につながったり、生まれてくる 人を手段・道具と見なしたりすることになると指摘しています。 また、クローン技術 により生み出された人と男女の関与によって生み出された人との間に差別が生じる可 能性もあること、さらに、生まれてきた人が安全に成長することが保障できないこと も指摘しています。 以上のようにクローン人間を生み出すためには、安全性・倫理面 で多くの問題点ことからも、簡単に許せるものではないということがお分かりいただ けるでしょうか。しかし、体細胞によるクローン胚は、再生医療だけでなくクローン 個体を産生することなく、卵子そのものが形成されない患者に対する究極の治療法と なり得る可能性もあり、クローン技術は再生医療だけでなく、不妊治療などの生殖補 助医療に革命をもたらす可能性も秘めています。 |
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| No24 | −2003.5.22日号− |
| その1 〜これからの生殖医療〜 現在日本で 議論になっている非配偶者間の生殖医療について取り上げました。 その2 〜精液所見が胚盤胞到達率に与える影響〜 胚盤胞移植(5日目移植)は近年培養液の開発が進み、高い妊娠率が報告されるよ うになっています。しかし、受精卵が胚盤胞になる率(胚盤胞到達率)はまだ高いと は言えず、2日目や3日目移植と比較しても胚移植のキャンセル率が高く、さらに胚 盤胞まで発育しない胚の「発育しない原因」はまだ明らかにされていないのが現状で す。しかし最近、精子と胚盤胞到達率との関連が報告されており、当クリニックでも 精液所見と胚盤胞到達率との関連を調査してみました |
| ◇◇ 日本の非配偶者間生殖医療はどこまで許されているか ◇◇ |
| 生殖補助医療は「人工授精」「体外受精-胚移植」「代理懐胎(代理母・借り腹)」 に分けられます。 まず人工授精については配偶者間はもちろん、非配偶者間でも認め られています。 体外受精-胚移植については、現在認められているのは配偶者間の体外受精のみであり、提供精子や提供卵子による体外受精や提供胚を移植することは認め られていません。 同様に代理懐胎についても認められていません。生殖医療が進むと 、胚や精子の形成がうまくいかない方や、子宮を持っていない方からは、非配偶者間 の生殖医療を受けてでも我が子を得たいという要求が出てきます。 1990年代に入 り我が国では代理母が認められないために、海外にまで出かけて治療を受ける人々が 出てきました。 |
| ◇◇ 生殖補助医療部会とは? ◇◇ |
| さて、今後もこのまま非配偶者間の体外受精-胚移植を認めないのか?それとも認め るのか? そういった議論は、精子・卵子・胚の提供等による生殖補助医療のあり方に ついて、平成10年10月より旧厚生科学審議会先端医療技術評価部会の下に設置さ れた生殖補助医療部会において、現在、精子・卵子・胚の提供等による生殖補助医療 に関する重要事項を調査し審議が行われています。 この生殖補助医療部会においては 、精子・卵子・胚の提供等による生殖補助医療に関する以下の事項等について検討さ れており、安全面・倫理面など多方面にわたる議論がなされています。 【1】提供された精子・卵子・胚による生殖補助医療の実施、精子・卵子・胚の提供 の条件 (1) 提供された精子・卵子・胚による生殖補助医療を受けることができる者の条件 (2) 精子・卵子・胚を提供できる者の条件 等 【2】提供された精子・卵子・胚による生殖補助医療の実施、精子・卵子・胚の提供 までの手続や実施医療施設の施設・設備の基準 (1) 提供された精子・卵子・胚による生殖補助医療を受ける者、精子・卵子・胚の提 供者等に対するインフォームド・コンセント、カウンセリ ングの具体的な内容 (2) 実施医療施設の施設・設備の基準 等 【3】管理体制 (1) 提供された精子・卵子・胚による生殖補助医療に係る公的管理運営機関の選定・ 業務の具体的な内容 (2) 実施医療施設等の監督体制 (3) 生まれた子が知ることができる精子・卵子・胚の提供者の個人情報の管理方法 等 |
| ◇◇ 非配偶者間の生殖医療における問題点 ◇◇ |
| 現在、生殖補助医療部会では非配偶者間の体外受精-胚移植を認めてよいのではない かという議論が持ち上がっています。 しかし、これまで国内では禁止されていた非配 偶者間生殖医療を実施することを想定した場合に、これを望むご夫婦の希望、言い換 えれば自己決定権は完全に充足されますが、生まれてくる子供の福祉も含めたことを 考えると議論が複雑になってきます。 その一つが「親権」です。遺伝学上の母、妊娠 出産する母、そして子供を得ることを願って契約した母の3通りの母が存在すること になります。このような母の定義が複雑化する以外に、我が国における法律上の親子 関係、子供の法的地位など考慮するべき課題が山積みしています。これらを解決する のはとても困難であり、産婦人科医のみで決められるものではありません。よって、 医師だけではなくカウンセリングや弁護士などさまざまな分野のメンバーで構成され た、生殖補助医療部会の意見は大いに尊重されるべきだと考えられています。 |
| ◇◇ まとめ ◇◇ |
| 生殖医療の実施内容に関して各国ともすべて野放しというわけではなく、何らかの
規制をそれぞれの国における歴史、文化、伝統、宗教、あるいは社会的合意等によって行われています。 日本の社会は、アメリカ型のように一見野放しのあらゆる形態の 非配偶者間生殖医療が行われるのを望んでいるのか、あるいは容認するのかは分かり ません。しかし、もっとも大切なことは、生殖医療に従事する医師たちに研修の機会 を提供し、議論を一般化することだと考えられています。 また、最も起こってはなら ないことは、日本のどこの医療機関で何が行われているのか誰にも分からないまま多 くの問題を抱えている医療が実施されることだと思われます。 |
| ◆◇ 胚盤胞とは? ◆◇ |
| まず胚盤胞についておさらいしておきます。 卵子は受精から2〜3日目で4〜8分 割になり、4日目でおよそ16分割になります(写真1)。 16分割になるとそれぞ れの割数の細胞同士が密着し、細胞がぎっしりと詰まったような状態になります(写 真2)。 この時に、外周の細胞同士も密着するので、胚の内部が外側から遮断されて 、そして今度は内部に液体が貯まってきます(写真3)。 そして全体が大きく、胚を 包んでいる透明帯は薄くなってきます(写真4)。 この状態を胚盤胞(ブラストシス ト:Blastocyst)と呼び、自然の場合この胚盤胞の状態まで育った胚が、子宮内に戻っ てきて子宮内膜に着床します(受精からはおよそ5〜6日目です)。 胚盤胞到達率と は、受精卵あたり何パーセントの胚が胚盤胞にまで発育したかを表します。 ↓写真はこのページに載せています http://www.ivfosaka.com/soon/ivfosaka/magazine/blastocyst.html |
| ◆◇ 一般体外受精と顕微授精での胚盤胞到達率の比較 ◆◇ |
| まず、精子と卵子をシャーレ内で混和して受精させる「一般体外受精」と、1匹の 精子を選択し注入して受精させる「顕微授精」の症例で胚盤胞到達率に差があるか調 べてみました。 結果は一般体外受精では平均の到達率が43.5%、顕微授精では3 8.5%で、有意に一般体外受精において高い胚盤胞到達率が得られました。さらに 一般体外受精を行った際の精液の総精子濃度が8000万以上であればさらに到達率 が高率になるという結果も判明しました。 これは、人の目により形態的に良好な1匹 の精子を選択して注入する顕微授精よりも、一般体外受精で数千万の精子の中から自然の力で良好な精子が選別され、卵子と出会い受精に至っているからと推測されまし た。 |
| ◆◇ その他の精液所見と到達率との関係 ◆◇ |
| さらに、運動精子濃度が4000万以上、精液中の白血球数が150万以下で胚盤胞到達率が高率であることも判明しました。しかし、精子の奇形率と胚盤胞到達率と の間に相関はみられませんでした。 |
| ◆◇ まとめ ◆◇ |
| 以上のことより、精液所見は一般体外受精を行う場合において、胚盤胞到達率に大きく関与することが分かりました。 現在、胚盤胞移植は着床に原因があるとされる方 を対象に行っていますが、それらの方に対する治療は胚盤胞移植だけでなく、従来か ら行われている2日目3日目移植でも妊娠が得られています。 そこで、今回の検討よ り、着床に問題があるとされる場合には、精液所見に応じて2日目3日目移植もしく は胚盤胞移植を選択することにより、胚移植キャンセル率の点からも賢明であると考 えられました。また、精液中の白血球数の増加により胚盤胞到達率が有意に低下して いたことから、胚盤胞移植を行う際には*膿精子症の治療を十分に行う必要があると考 えられました。 *膿精子症:膿精子症とは精液1mL内に白血球が100万個以上存在するもので、精嚢あ るいは前立腺の炎症が原因と考えられています。 |
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| No25 |
−2003.6.21日号−
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| 〜海外からの不妊治療情報!!〜 |
| ◇◇ カフェインの摂取量と体外受精 ◇◇ |
| カフェインの消費量と生産分娩率や体外受精成績との関連を調べたというめずらしい報告がありました。 普段のカフェインの摂取量、治療期間中のカフェインや妊娠に 至った時の摂取量を計算し、妊娠の予後との関係について調べていました。結果は摂取量あるいは妊娠が判明した時期のカフェイン摂取量が1日50mgを超える場合では 、生産分娩に至る確率が低下すると報告されていました。 また、その他の体外受精に 関わる因子(受精率や妊娠率など)にはカフェインの摂取量は影響がなかったことも 報告されていました。ちなみに、カフェインの含量はコーヒー1杯に100〜150mg、 お茶1杯に50〜75mg、コーラ1杯に30〜50 mgだそうです(コーヒーやお茶に関し ては煎れ方などによって大きく変動する可能性あり)。 その他、鎮痛剤・かぜ薬・ド リンク剤・チョコレート・ガム・ココアなどにも含まれています。 参考文献:A prospective study of the effects of female and male caffeine consumption on the reproductive endpoints of IVF and gamete intra-Fallopian transfer. Hum Reprod. 2002 Jul;17(7):1746-54. |
| ◇◇ 胚移植は超音波下で行うべき? ◇◇ |
| 体外受精を受けられたことのある方で、胚移植の時に超音波を使わずに移植をされた方もおられると思います。 当院では全例で腹式超音波を用い、子宮内膜の一番いい ところに胚をお戻しできるようにしていますが、クリニックによっては「クリニカル タッチ法」つまり「手探り」で移植しているところもあるようです。 超音波を用いて も用いなくても妊娠率に差はないとする報告もありますが、やはり超音波を用いた方 が良好だという報告が多く、超音波ありで26.3%、なしで18.1%という報告 、他に超音波ありで34.4%、なしで19.7%という報告もありました。 私も胚移植時に超音波画像を見る機会がありますが、チューブが入ったような感触があって も、実際はチューブが入っていないということもよくあります。今、体外受精を受けられている方は、その施設で超音波を用いて胚移植をしているかどうかも注意して見 ておく必要があると思います。 参考文献:The usefulness of ultrasound guidance in frozen-thawed embryo transfer: a prospective randomized clinical trial. Hum Reprod. 2002 Nov;17(11):2885-90. |
| ◇◇ バイアグラによる子宮内膜の改善 ◇◇ |
| バイアグラは男性不妊に使用されている薬ですが、女性においては一部の例外を除き 、性機能障害の改善に有用性は認められていません。 しかし、子宮と卵巣における血流の改善は生殖補助医療の成績を改善することが出来るのではないかと期待されてい る薬です。 少し難しい話になりますが、子宮の平滑筋に作用し弛緩させ血管の拡張をもたらす一 酸化窒素(NO)は、cGMPという物質と関連しています。バイアグラはこのcGMP の分解を抑制することで、一酸化窒素の産生を促し血管拡張作用を示し、これが子宮 内膜の改善につながると考えられています。実際にバイアグラを投与することにより 、子宮動脈の血流が改善し、子宮内膜の改善が見られたとする報告も多数見られます 。 この論文では、今まで数回体外受精を行っても妊娠せず、かつ前回の体外受精で子宮 内膜厚が薄かった10症例に、次の治療周期でバイアグラを用い、平均の子宮内膜厚 保が6.4mmから8.5mmに改善され、また10症例のうち3例に妊娠がみられ たという報告でした。当院でも、昨年からバイアグラの膣坐薬を作成し、患者様の同 意の下使用しており妊娠例も数多く見られています。 参考文献:Benefit of vaginal sildenafil citrate in assisted reproduction therapy. Fertil Steril. 2002 Apr;77(4):846-7. |
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| No26 |
−2003.7.31日号− |
| 〜海外からの不妊治療情報!!〜
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| ◇◇ 体外受精を繰り返すと卵巣の反応は悪化する? ◇◇ |
| 体外受精には排卵誘発剤等を多く使用しますが、繰り返し行うと卵巣の反応が悪くなり、卵胞の数や採卵数が低下するのでは?と心配されている方も少なくはないと思 います。 ある施設での報告は体外受精を3回反復して受けた190名の方を対象に調 べたところ、卵胞数、採卵数、受精卵数は、反復して受けた3回の体外受精間で有意な差は見られなかったということでした。 他施設での報告でも、採卵数に影響がない ことが分かっています。 参考文献:Ovarian response in three consecutive in vitro fertilization cycles.Fertil Steril. 2002 Apr;77(4):706-10. |
| ◇◇ 2,3日目移植よりも4日目移植?? ◇◇ |
| 一般的には胚移植は4分割期胚を移植する2日目移植、8分割期胚を移植する3日目移植、そして胚盤胞期の胚を移植する5,6日目移植が行われています。しかし、4日目にコンパクション(卵の各割球が凝集した状態)をおこした桑実期(そうじつ
き)胚を移植することにより、3日目移植に比較して良好な胚が選別される確率が高
く、また移植胚数を少なくし良好な成績が得られるという報告がありました。 この論文によると、桑実期胚の評価を (1)コンパクションをおこしている割球の割合 (2)コンパクションをおこした細胞の形態 (3)2,3日目の時の胚の質 (4)フラグ メント(分割する際に発生する不純物)の割合の4点から観察し胚移植を行ったとこ ろ、着床率・妊娠率は3日目移植よりも良好な成績が得られたとのことです。発表さ れていたデータでは4日目移植で全てが良好だと判定された胚を移植した場合の着床 率が46.4%と3日目移植の着床率の21.4%を有意に上回っていました。 参考文献:The neglected morula/compact stage embryo transfer. Hum Reprod. 2002 Jun;17(6):1513-8. |
| ◇◇ 新しい排卵誘発剤アロマターゼ阻害剤 ◇◇ |
| 経口の排卵誘発剤として、現在最もよく使われているのはクエン酸クロミフェン( クロミッド)だというのはみなさんもご存じだと思います。 しかし、クロミッドは副作用として子宮内膜が薄くなったり、頚管粘液にも悪影響を及ぼすことがあります。 しかし、アロマターゼ阻害剤と呼ばれるこの薬は、アンドロゲンというホルモンをエストロゲン(卵胞ホルモン)へと転換する酵素を阻害することにより排卵を促す薬剤 で、子宮内膜や頚管粘液に影響を与えません。 エストロゲンの産生を抑えることによ って、体が「エストロゲンが不足している」と思わせることにより、脳下垂体と呼ば れる所から排卵や卵胞発育をさせる命令が促進されるのです。開発当初は副作用のた め普及しなかったのですが、現在では開発が進み、当初開発されたアロマターゼ阻害 剤よりも1000倍の効果を有する薬品が登場していますが、現在では、保険適応と して用いられる疾患は、ホルモン依存性の腫瘍、例えば乳癌等の治療のみとなってい ます。 ですので、排卵誘発剤としてのアロマターゼ阻害剤の保険適応はされていません.この論文では、人工授精を行う患者様に投与したところ、成熟卵胞の数が増加し併 用した排卵誘発剤(注射)の量が少なくて済み、しかも妊娠が有意に多く見られたと いう論文でした。当クリニックでもアロマターゼ阻害剤の導入を検討しています。 参考文献:Aromatase inhibition improves ovarian response to follicle- stimulating hormone in poor responders. Fertil Steril. 2002 Apr;77(4):776-80. |
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| No27 |
−2003.9.1日号− |
| 〜難治性不妊の診断と治療 前編〜 |
| ◇◇ 排卵障害が関与する難治性不妊 ◇◇ |
| 排卵という現象は、視床下部−下垂体−卵巣という系がお互いに命令を出し合い調節 がされています。そのバランスが崩れると、排卵障害が起こる原因になります。他にも 原因として血中のプロラクチン濃度が高くなる高プロラクチン血症や、卵巣の外側の膜 が固くなり排卵できなくなる多嚢胞性卵巣症候群など様々な原因で排卵障害が起こって きます。難治性の排卵障害を示す疾患について例を挙げ、解説していきたいと思います。
− 多嚢胞性卵巣症候群 (PCOS : polycystic ovary syndrome) − 多嚢胞性卵巣症候群は、排卵障害の病気ですが、それだけでなく月経異常、肥満、多毛などの男性化もおこります。卵巣の外側の膜が厚くなって排卵が起りにくいことから 排卵障害の原因となります。 排卵させようと思っても排卵が起こりにくいわけですか ら、排卵を起こすホルモンLH(黄体化ホルモン)がどんどん高くなり排卵誘発剤に過剰 に反応したくさん排卵を起こし、その結果副作用として卵巣が腫れたり、多胎妊娠が発生しやすくなったりします。 多嚢胞性卵巣症候群の治療は、排卵を正常に起こすことが目的で行われます。まず は、クエン酸クロミフェン(クロミッド)という、正常な排卵を促すための薬を単独で 用い、プロラクチンが高い場合はそれを抑える薬(テルロンなど)を併用します。 クロ ミッドを単独で数ヶ月使用しても妊娠が成立しなければ、注射による排卵誘発へと治療 を切り替えていく必要があります。 さらに最近では、*メトフォルミンという薬を併用 し、良い排卵率・妊娠率が報告されるようになりました。 *メトフォルミン インスリン抵抗性が高血糖の原因と考えられる糖尿病の治療薬です。どうして糖尿病 の薬を服用するの?と思われるかもしれませんが、多嚢胞性卵巣症候群では卵巣内のア ンドロゲン(男性ホルモン)濃度が上昇し、 これによって排卵障害、卵巣の過剰刺激、 卵の質の低下を招くことが知られています。 メトフォルミンはこのアンドロゲンを下げ る作用があります。当クリニックでも多くの方がメトフォルミンを服用され、良好な改 善結果を得ています。 外科的な治療法として腹腔鏡治療があります。 腹腔鏡とよばれる顕微鏡でおなかの中 を観察し、卵巣の表面に穴をあけて排卵しやすくするというもので、妊娠率も高いとい われています。ですから、この病気とわかっている人や、疑われている人は、今自分が 治療を受けている(これから受けようと思っている)医療機関で腹腔鏡検査を行えるの かどうか調べておくとよいかと思います。 − 早発卵巣不全 (POF : Premature Ovarian Failure) − 閉経を過ぎると卵巣内の卵胞の発育がみられなくなり、エストロゲン(卵胞ホルモ ン)分泌が減少することにより、下垂体と呼ばれるところから卵巣刺激するゴナドトロ ピンというホルモンの分泌が増加してきます。 このような閉経後のホルモン環境、すな わち高ゴナドトロピン、低エストロゲンの状態が40歳以前の若い年齢で生じて無月経 となる状態を早発卵巣不全と呼びます。 しかし、同じ臨床症状とホルモン検査成績であ りながら、病理組織学的に卵巣に卵胞が認められない症例と認められる症例が存在する ことが明らかになっています。 前者は早発閉経と呼ばれ、この場合は卵巣の中に卵が存在しないのですから、卵子提供しか妊娠の可能性はありません。 後者をゴナドトロピン 抵抗性卵巣症候群と呼んでおり、このような難治性の排卵障害でも高いゴナドトロピンを抑える治療を施し排卵誘発を行い、減少した卵胞ホルモンを補う治療等で排卵に成功 し妊娠に至った症例も報告されています。 − 黄体化非破壊卵胞症候群 (LUF : Luteinized unruptured follicle) − ホルモン的には黄体化現象(排卵が起こって黄体期に入った)が認められているにも かかわらず卵子が排卵されない疾患で、卵巣自体における卵子排出機構の障害と考えら れています。 診断は超音波等で黄体期になっているにも関わらず卵胞が消失せずに残っていることから分かります。ただ、この疾患は原因がまだ明らかにされていないため、 排卵時期でタイミング良く排卵誘発剤を投与したり、子宮内膜症などの合併症がある場合はその治療を行うなどが挙げられます。 |
| ◇◇ 受精障害が関与する難治性不妊 ◇◇ |
| 近年、生殖補助医療技術の普及に伴い、ヒトにおける受精のメカニズムもだんだんと 明らかになり、精子や卵の成熟、受精能力などいろいろと論じられるようになってきて いるものの、それが不妊治療の成功率の上昇に大きく結びつくまでには至っていません。 受精障害の原因には精子や卵子自身の異常に加えて、卵子と精子の融合に影響を及 ぼす因子もあると言われています。 − 抗精子抗体 − 抗精子抗体とは、簡単に言うと精子を異物ととらえて攻撃してしまうものと考えれば 分かりやすいと思います。男女両方に検出されるもので、男性が抗体を持っている場合 は射出された精子にすでに抗体が結合しているため、頚管粘液でも精子の運動が障害されます。 女性が持っている場合も、抗精子抗体が頚管粘液や子宮や卵管に移行している ため、受精障害が起こり不妊の原因となります。 検査で抗精子抗体の有無については分 かりますので、原因不明の人工授精の反復不成功例では、この抗精子抗体の存在が疑い 検査をすることがあります。また、抗精子抗体が非常に高い場合は体外受精や顕微授精 が必要となってくることがあります。 − 抗透明帯障害 − 透明帯とは卵子を覆っている、糖タンパク質からなる厚さ6〜16マイクロメーター の透明な層で、卵子が受精して子宮に着床するまで胚を保護し、また多精子受精(1匹 以上の精子が卵子内に進入して起こる異常な受精)が起こらないようにしています 受精が起こる過程で、精子は卵子のその透明帯に進入し卵子目指して進むわけですが、その透明帯に抗精子抗体が検出されることがあります。これは受精障害の原因となり、体外受精で受精しない場合は顕微授精を行います。顕微授精の場合は、精子が卵子の透明 帯を通過するという過程をパス出来るわけですから、顕微授精が必要になってくるわけ です。 【参考文献】 香山 浩二 「難治性不妊の診断と治療」 産婦人科治療 Vol.87 No.1 JUL.2003 |
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| No28 |
−2003.10.10日号− |
| 〜難治性不妊の診断と治療 後編〜 |
| ◇◇ 着床障害が関与する難治性不妊 ◇◇ |
| 近年の不妊治療では採卵できる確率が約90%、受精率に関しても約80%を確保す ることが出来るようになってきました。 しかし、依然として*着床率は30%程度にとど まり、その障害機序の解明が待たれているのが現状です。着床障害が疑われる症例では、 どのような疾患が疑われるのでしょうか? *着床率 体外受精を例に挙げますと妊娠率は(妊娠された方の人数)÷(胚移植された方の人 数)%ですが、着床率は(出来た赤ちゃんの人数)÷(移植した胚の数)%になります。 例をあげますと、2人の方が体外受精−胚移植を受けられて2人とも妊娠されたら妊娠 率100%ですが、その2人がそれぞれ2個の胚を移植されていて(合計4個移植)、 出来た赤ちゃんが1人ずつ(合計2人)であれば、着床率は50%となります。 − 黄体機能不全 − 胚が着床するためには、子宮内膜が十分に発育していることが必要で、十分に発育するためには黄体ホルモンや卵胞ホルモンが十分に分泌されている必要があります。さら にそのホルモンに対して子宮内膜が反応をしなければなりません。そのために、両ホルモン値を定期的に検査することが必要になってきます。 治療としては黄体ホルモンの補充、排卵誘発剤による黄体機能の活性化、プロラクチンが高いことによる分泌不足に対 してはテルロンなどプロラクチンを下げる薬の投与などが必要となってきます。 − 免疫異常 − 習慣性流産の原因となる*抗リン脂質抗体などの自己抗体が血液の循環障害を起こし、 着床不全の原因となることが指摘されています。このような「自己免疫異常」の場合にする検査としては、採血を行ったあと抗リン脂質抗体を調べたり血液凝固能を調べたり します。 薬物療法として、高まりすぎた免疫機能の抑制と循環の改善を目的としてプレ ドニゾロンや柴苓湯などの免疫抑制薬、アスピリン(小児用バファリン)やヘパリンな どの血液が固まるのを抑える薬の投与を行います。 他には夫のリンパ球というものを移植することによって、流産が予防できるケースがあるとの報告もあります。 *抗リン脂質抗体 抗リン脂質抗体を持っている方は、血栓症、反復性流産、血小板減少症などの臨床所見が認められます。抗リン脂質抗体があると、血液凝固が亢進され、血栓形成が起こり やすくなります。妊娠週数が進むにつれて、胎盤内の絨毛間膣と呼ばれるところやその 周辺の小さな血管には、血液の凝固因子が増加しています。 そのような状態になっている所に抗リン脂質抗体が反応すると、容易に子宮胎盤循環不全を起し、流産や死産とい う結果になると考えられています。 − 子宮内腔の異常 − 必ずしもその因果関係は明らかにされていませんが、子宮の奇形や、子宮内膜ポリー プ、筋腫等による子宮腔の変形は着床障害の原因となる可能性が高く、診断がつけば子宮形成術や子宮鏡を用いての切除等を行った方が良いことがあります。 |
| ◇◇ 造精障害が関与する難治性不妊 ◇◇ |
| 造精障害とはその名の通り、精子を造る機能に障害がある状態をいいます。 男性不妊 の原因として最も重要なのは造精障害で、その原因はホルモン分泌の異常、免疫関係の 異常、*精索静脈瘤など多岐にわたりますが、頻度的には原因の分からない特発性のもの が最も多いとされています。 *精索静脈瘤 精索静脈瘤は、精索 (精巣を吊っている索)の静脈内の弁の欠損、不全などが原因で発 生します。異常な弁により正常な血流が妨げられ、静脈が拡張します。精索静脈瘤の経過は緩徐で、無症候性のこともあります。15〜25才の男性によく発生します。精索静脈瘤は、不妊治療を受ける男性の39%において不妊の原因であることが分かっています。 精液の基準値を満たさない場合には造精障害の原因を探ります。基準値を満たしてい るにも関わらず男性不妊が疑われる場合には精子の機能検査を行います。原因がホルモ ン分泌の異常であればクロミッドなどを服用し下垂体ホルモンの分泌を促進したり、プ ロラクチンが高い場合はテルロン等の薬を服用します。人工授精を数回行っても妊娠に 至らない場合は、早めに次のステップに進み体外受精で受精しない場合は、顕微授精を 行う必要があります。 |
| ◇◇ さいごに ◇◇ |
| 前号と今号にわたり、難治性不妊の原因となる排卵障害、受精障害、着床障害、造精 障害の診断とその治療法について分かりやすく解説してきましたが、いかがでしたか? 少し難しかったでしょうか?不妊治療にあたっては、経験的な治療を漫然と続けるので はなく、妊娠成立の過程を常に念頭に置いて不妊原因を見つけ出し、個々のご夫婦に最 も適した治療法の選択が重要になってきます。そのためには、患者様の医学的なことだ けでなく、社会的背景にも充分に考慮していく必要があると考えられます。 |
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| No29 |
−2003.11.24日号− |
| 〜胚発生障害や着床不全は反復しやすいか?〜 |
| ◇◇ 胚発生障害は反復しやすいか? ◇◇ |
| 良好な胚を獲得することは、体外受精を行うにあたって妊娠成立に導くための、不可欠な要因の一つです。 ところが、胚発生障害を何度も繰り返す症例があり、それに対しては確立された治療手段がないのが現状です。そこで、胚の質的向上をはかるためには どういった方法が取られているのでしょうか? − 胚の評価法 − 生殖医療の域ではたくさんの胚の評価法が存在します。中でも、顕微鏡下における形 態の観察がもっとも簡単で実際的な方法です。割球(かっきゅう:受精卵の細胞)の形 態の均等性と、そのフラグメンテーション(割球の分裂の際に出る不純物)の量によっ て分類されます。 それを利用し、移植胚の選択や移植胚数の決定を行います。また、胚 の発育速度も発生能力を予知する方法の一つで、非常に重要なパラメータになります。 − 胚発生に影響する因子 − 胚発生には多くの因子が関与するものと推定されています。まずは、卵子の問題として、体外受精を何度行っても妊娠しない症例の中には、卵細胞質の機能の欠損が形態不良胚の産生を繰り返す原因となっていると言われています。 また、加齢により、卵子の 染色体異常の発生頻度が上昇することが分かっており、高年齢の婦人から回収した卵子は、たとえ成熟卵であっても染色体異常の割合が高いと言われています。 また一方で、 子宮内膜症患者では割球数が減少し、胚発育停止の頻度が増加するという報告もありま す。しかし、最近の知見では子宮内膜症の存在と体外受精の成績には密接な関係はない ものと考えられています。 − 反復胚発生障害症例への対応 − それでは、形態不良胚しか得られない場合どのように受精卵の質を上げていくのか、 その可能性が注目されている方法には以下のようなものがあります。 1.共培養(co-culture) 共培養とは、たとえば初期の胚の場合だと胚が発生する卵管内の環境をできるだけ再現する目的で、たとえば卵管の細胞と胚を一緒に培養し、胚発生を補助する方法です。 以 前はウシやサルの細胞が用いられることもありましたが、胚への感染の危険性が大きな 問題点となっていました。 そこで、患者自身の子宮内膜細胞を共培養に用いる方法が臨 床応用され、その結果、胚の割球数の有意な増加やフラグメンテーションの明らかな減 少という有効性が報告されています。 2.胚盤胞移植(Blastocyst transfer) 近年、連続的培養液とよばれる胚発生の途中で組成の異なる培養液に切り替え、効率 よく胚盤胞(受精後5日目の胚)にまで発育させる胚発生の前半と後半での本来の体内 での環境を想定された連続的な培養液が開発され広く使用されています。 いろいろな会 社からタイプの違う培養液が販売されており、A社培養液で胚発育が良好でなかった場 合次回はB社培養液に変更するなどで、胚の質が改善されるケースもあります。 3.卵細胞質移植(Cytoplasmic transfer) 現在もっとも注目されている治療法として、提供卵の卵細胞質移植があります。これ は卵細胞質内のミトコンドリアなどを患者の卵内に注入し、胚発生能を高めることを期 待する方法です。しかし、どういう症例を適応とするのか、提供卵子の確保、安全性な ど今後解決されなければならないことがまだまだあり、臨床に用いられるためには今後、 さらなる技術の発展と安全性の確立が必要となってきます。 |
| ◇◇ 着床不全は反復しやすいか? ◇◇ |
| 着床は、胚を迎える準備が整っている子宮内膜に胚が接着し、そして胚発育を継続し ていくことです。 したがって、着床不全は、胚、子宮内膜、またはその両者の異常や、 胚と子宮内膜の相互作用を妨害する因子によって生じると考えられています。胚側の原因としては、卵子の発育異常、受精の異常などがあげられ、子宮側の異常としては、子宮奇形などの器質的異常や子宮内膜の機能異常(黄体機能不全やプロラクチンの異常、 多嚢胞性卵巣症候群)などがあげられます。 − 初回体外受精と複数回体外受精との着床率の比較 − 体外受精の施行回数を重ねるごとに着床率がどうであるか、胚の影響を除くため39 歳以下の卵管性不妊の体外受精740周期より、2個以上の良好形態胚を移植した周期で比較したところ、初回体外受精の着床率(21%)よりも複数回の体外受精での着床率(11%)が有意に低くなったというデータが出ています。 このように正常胚が移植 された例に限定して検討しても、一度も着床しなかった例では着床率が低下することが 示され、着床不全が反復することが示唆されています。 − 着床不全の治療 − 子宮奇形や子宮筋腫などの器質的異常がみられる場合、筋腫を摘出するなどの外科的治療が試みられます。しかし、術後にかえって子宮内膜の状態が悪くなることもあり、 検査を行い器質的異常が本当に着床不全の原因となっているかを判断し、慎重に適応と するべきとされています。黄体機能異常や卵巣機能異常による着床不全に対しては、ホ ルモンを投与して黄体機能を補正したり、排卵誘発剤により卵発育を刺激して黄体形成 を改善するなどが試みられます。 その他には子宮血流と着床能力を改善する方法として、低容量アスピリン(バファリ ン)の投与で、子宮血流の不良例に対して血流を改善させる方法で妊娠率が上昇したと いう報告がされています。 【参考文献】 柴原 浩章 「胚発生障害は反復しやすいか?」 産婦人科の実際 Vol.51 No.5 May,2002. 神野 正雄 「着床不全は反復しやすいか?」 産婦人科の実際 Vol.51 No.5 May,2002. |
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| No30 |
−2004.2.1日号− |
| 〜排卵誘発剤の使い分け〜 |
| 1.クロミフェン(クロミッド)療法 |
| 視床下部に作用して、*ゴナドトロピン放出ホルモン(GnRH)の分泌を促進し、下垂体 においてGnRHの感受性を増加させゴナドトロピンの分泌を促進させて、その結果卵胞発
育が促進されます。 *ゴナドトロピン放出ホルモン・・・ゴナドトロピンとはFSH(卵胞刺激ホルモン)とLH (黄体化ホルモン)の総称を言い、卵胞の成長や卵胞の最終成熟を促し排卵を起こさせ たりします。そのゴナドトロピンの分泌を促進させるのがゴナドトロピン放出ホルモン です。 投与方法は月経または消退出血開始5日目から1日1〜3錠服用するのが一般的で、 通常は投与終了後5〜10日目に排卵がおこります。クロミフェンは高い排卵率のわり に妊娠率は25〜30%とやや低いといわれており、これはクロミフェンのもつ抗エストロ ゲン作用による頚管粘液への影響や子宮内膜が薄くなったりするなどの二次的な作用の ためであると考えられます。 ただしこれに関しては医師それぞれで意見が違うようです。 そこでこのデメリットを払拭すべく、内服開始を早める投与法も試みられています。ま た以前このメールマガジンでも紹介したアロマターゼ阻害薬にはクロミフェンのもつデメリットが少ないといわれており、最近日本国内でも使用されはじめてきました。ただ し、保険適応にはなっていません。シクロフェニル(セキソビット)という、クロミフ ェンと同様の薬理作用を持つ薬もありますがクロミフェンに比較してやや弱めの薬剤で、 クロミフェンでは作用が強いという場合に用いることがあります。 |
| 2.ゴナドトロピン療法 |
| hMG(下垂体性性腺刺激ホルモン:human menopausal gonadotropin)製剤には数種類 ありそれぞれ、FSHとLHの比率が異なっています。これには卵巣・卵胞の反応をみながら 薬剤を選択していきますが、様々な方法がとられています。 (1)等量投与法(Fixed dose法) 通常、月経周期3〜5日目よりhMG(FSH)製剤を同一量で連日または、隔日投与します。 卵胞の大きさが16mm〜18mm以上となった時点で排卵を促進させ卵子の成熟を促すために hCG(胎盤性性腺刺激ホルモン:human chorionic gonadtropin)を投与します。また血 中の卵胞ホルモンの値も目安とします。 (2)低容量漸増療法(step up法) hMG(FSH)製剤を低用量から投与し、少しずつ増量していく方法で投与期間が若干延長 するものの*OHSS等の副作用の危険性は低下する方法です。 *OHSS(卵巣過剰刺激症候群) 排卵誘発剤特に注射剤で多く問題になる副作用で、お腹がはれる・血液が濃縮すると いった症状が現れます。特に妊娠が成立した場合、さらに悪化するのが特徴です。 (3)漸減療法(step down法) hMG(FSH)製剤を最初に高めの用量を2〜3日連日投与し、卵胞の大きさを参考に減量し ていく方法でこれも副作用の危険は低下する方法です。 |
| 3.GnRHアゴニスト(スプレキュア)併用ゴナドトロピン療法 |
| ゴナドトロピン療法中にみられる内因性ゴナドトロピンの影響を取り除き、採卵前の 自然排卵を防止してキャンセル率を低下させることができます。 また内因性のホルモン を抑えているため採卵時間の調節も可能となりますが、hMG(FSH)量は増加するという欠 点があります。投与法には、short法、ultra short法、long法などがあり、これも卵巣 の反応性によって投与法を選択します。 |
| 4.クロミフェン-hMG療法 |
| クロミフェン療法に加え、hMGによる卵胞刺激を追加することでエストロゲン分泌を促 し、クロミフェンによる二次的な作用(内膜の薄化など)を予防することができます。 クロミフェン投与終了後hMGを卵胞発育状態を確認しながら投与するのが一般的です。 |
| 5.GnRHアンタゴニスト |
| 強力かつ即効的なゴナドトロピン分泌抑制効果があり、作用時間も短くGnRHアゴニス トのような副作用もなく調節性に優れており、近年日本国内でも発売予定となっています。 前述の方法と比較して受精率、分割率、移植胚数、妊娠率は同程度といわれていま す。 今回は基本に戻って排卵誘発についてまとめてみました。いずれの方法も卵巣の反応、 治療におけるバックグラウンドなどの違いがあるため、主治医とよく相談して治療を進 めていく事が大切です。 |
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| No31 |
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